研究概要 |
1.研究代表者は、昨年度、地球磁気圏内の領域1・2の沿磁力線電流発生の新しいモデルを提案した[Proc.NIPR Symp.,1993]。今年度はその発展として他の大規模沿磁力線電流系の発生機構の考察へも研究範囲を拡大した。他の電流系とは、NBZ系(惑星間空間磁場が北向きのとき極冠域に現れる)、低緯度境界層系、カスプ・マントル系、(真夜中)逆領域1系が主なものである。領域1・2の発生にとって、昼間側カスプ域への太陽風粒子侵入は重要な要因であったが、他の電流系は、より密接にこの侵入プラズマ粒子集団に関係することが示唆され、数値モデルによってNBZ系、カスプ・マントル系、逆領域1系が互いに関連をもって、すなわち、侵入プラズマの圧力勾配によって生成されることが示された[地球電磁気・地球惑星圏学会,1994年3月]。 2.多数の人工衛星のデータに基づいて決定された磁気圏磁場モデル(チガネンコ、ウズマノフによる、1987-1990)から、磁力線閉領域[惑星間空間磁場による影響の比較的小さい領域]における磁気ドリフトベクトルの分布図を作成した。この分布図から、上記1に掲げた「低緯度境界層の電流系」は、マグネトシースから侵入してくるプラズマの圧力勾配がその発生原因である可能性が大きいことが判明した[地球電磁気・地球惑星圏学会,1995年3月発表予定]。この発見は極めて重要で、1960年頃から一般的に受け入れられてきた太陽風磁気圏粘性相互作用による低緯度境界層電流系モデルよりも、より確からしい新しいモデルの提唱を意味する。なお、最近の人工衛星観測データを使って「粘性相互作用モデルではこの電流系の特性が説明できないこと」も、この学会で論証する予定である。
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