1.平成4年度から本格的に始まった「オーロラ特異パターン形成の理論的研究」は画期的な成果を上げた。従来、ほとんど見当のつかなかった、オーロラサージ・オメガバンド・リップルなどの特異パターン形成に対応する磁気圏内の電荷分離過程が同定されたのである。それも、電離層面上に投影されたオーロラ動態を粒子シュミレーションで観測事実に矛盾することなく再現してしまうという斬新な方法によってである。さらに、研究代表者達は、この方法を準定常的な巨視的沿磁力線電流分布の問題に適用し、観測から決定された「領域1及び2の汎世界的電流分布」(からまり合った2匹の蛇にたとえられる特異分布)を、初めて数値シュミレーションで再現することに成功した。この結果から、「太陽風ダイナモが、極域の磁気的に開いた領域を通じて、磁気圏内のプラズマ分布をゆがませ、電荷分離を引き起こし、電流を発生させている」という全く新しいコンセプトが自然に導かれた。 2.多数の人工衛星のデータに基づいて決定された磁気圏磁場モデル(チガネンコ、ウズマノフによる、1987-1990)から、磁力線閉領域[惑星間空間磁場による影響の比較的小さい領域]における磁気ドリフトベクトルの分布図を作成した。この分布図から、低緯度境界層の電流系はマグネシースから侵入してくるプラズマの圧力勾配がその発生原因である可能性が大きいことが判明した。[地球電磁気・地球惑星圏学会、1995年3月発表予定]この発見は極めて重要で、1960年頃から一般的に受け入れられてきた、太陽風・磁気圏粘性相互作用による低緯度境界層電流系モデルよりも、より確からしい新しいモデルの提唱を意味する。なお、最近の人工衛星観測データを使って、「粘性相互作用モデルではこの電流系の特性が証明できないこと」も、この学会で論証する予定である。
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