研究概要 |
本課題は、まったく新しい着想のもとずく質量分析法を用いた非発光ラジカル等の活性化学種の計測法に関するもので、化学種にLi^+イオンを付加反応させ、Li^+付加complexを作り、質量分析法によって検出する方法により、非発光ラジカルを含む総ての気相中低濃度ラジカルの計測システムの確立を目的とする。 本年度は、ノズルとスキマーの系からなる3段の差動排気装置を持つ大気圧四重極質量分析計を骨格とした本格的なシステムの組立を行った。特に今回新しく製作した部分は、マイクロ波キャビティが取り付く石英製のガスフロー管、放電ガスのための複数の流路系、アルカリ金属イオン源(Li^+イオン発生源)、ラジカルにLi^+アルカリイオンを付加させるためのイオン付加反応室、反応によってできた付加イオンを効率よく質量分析するためのinterfaceを組上げた。 一次反応イオンLi^+の強度等の基本的特性を求めた後、本法のキャラクタリゼーションを行うために、活性ラジカル種の検出法の検討を行った。材料化学に於ける基盤技術として注目される低温プラズマ、主にCH_4のマイクロ波放電プラズマ中のラジカル種の検出、同定を行った。CH_4のマイクロ波放電による生じる多種多様のhydrocarbonラジカル(主なものとしてC_nH_<2n>-1,C_nH_<2n>+1,nが少なくとも8まで)が本課題の方法により、初めて高感度に検出、確認された。又、CH_4/O_2混合ガス系のマイクロ放電で生成す種々の化合物の中に、長い間存在が議論の的となっている三酸化水素(H_2O_3)を気相において検出、H_2O_3Li^+の形でその存在を確認できた。
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