研究課題/領域番号 |
04804035
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
吉村 敏章 富山大学, 工学部, 助教授 (10158503)
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研究分担者 |
島崎 長一郎 富山大学, 工学部, 教授 (10019177)
作道 榮一 富山大学, 工学部, 教授 (40019170)
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キーワード | 有機硫黄化学 / チアザイン / スルフィルイミン / SN三重結合 / 熱分解反応 / 分子内脱離反応機構 / 反応速度 / ab initio法 |
研究概要 |
チアザイン類((] SY.tri-substituted left. [)S≡N)は硫黄と窒素の三重結合を持つ非常に珍しい化合物で、このような化合物の存在は一般にあまり認識されていない。我々は最近S、S-ジフェニル-S-フロロチアザインの合成に成功した。本研究ではこのチアザインと種々のナトリウムアルコキシドや二級アミンを反応させ種々のアルコキシチアザインやアミノチアザインが収率良く合成できることを見いだした。又これらのチアザインを熱分解させると分子内脱離反応が進行し、アルコキシ基からカルボニル化合物、アミノ基からシッフ塩基が生成することを見いだした。さらにこの反応の機構を調べる目的で動力学的検討を行なった結果、反応は一次速度式に従い、活性化エントロピーは負に大きな値が得られたが、フェニル基上の置換基効果は小さいことが分かった。これらの結果はスルホキシドの分子内脱離反応機構とは異なり、チアザインのSN三重結合の分極のため窒素がかなり強い塩基性をもっていることによるものと思われる。一方、チアザイン(X(] SY.tri-substituted left. [)S≡N)とスルフィルイミン((] SY.di-substituted left. [)S→N-X)は異性体の関係にあるが置換基Xが塩素や臭素の場合はスルフィルイミンしか得られないのに対してXが弗素、アルコキシ、アミノ基の場合はチアザインしか得られない。この原因を調べるためにH^^H(] SY.di-substituted left. [)S→NX)、X^^H__H(] SY.tri-substituted left. [)S≡N をモデルに用いてab initio法による分子軌道計算を行い、エネルギーや異性化の遷移状態を調べた。その結果Xの原子の電気陰性度が大きいものほどスルフィルイミンよりチアデザインのほうが安定であることが分かった。また逆に電気陰性度が小さいものほどスルフィルイミンはSN結合がほんのわずかの活性化エネルギーでナイトレンとスルフィドに分解してしまうことが分かった。すなわちN-アミノスルフィルイミンやN-アルコキシスルフィルイミンは合成出来ない。以上のようにチアザインの基本的な性質を明らかにしたが今後さらに多種のチアザインの合成法の開発が必要である。
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