マグネタイト微粒子(径10mmに程度)にオレイン酸等の脂肪酸を付着させ溶液に分散させたものを磁性流体というが、この磁性硫体をさらに10〜100倍希釈した溶液に磁場(1.1T)を加えた場合の磁気複屈折性を調べた.このマグネタイト希薄懸濁液の磁場に誘起される複屈折性が、各磁性硫体粒子のクラスター生成に起因すると仮定すると、溶液内で平均1.3個の粒子が磁場方向へクラスターを作って配列することを、吸光法から明かにした。一方こうした硫性流体溶液へ様々なケイ光分子を共存させると、硫性流体コロイドの磁場に対する挙動の変化によって、特定のケイ光分子も偏光性のあるケイ光を発することを見い出した。すなわちコロイド粒子と親和性の高い分子は、クラスター形成に伴って特定の配向をもつのに対し、親和性の低い分子は溶液内を自由運動する。この差によって分子の特定の構造を認識することを研究の最終目的とする。この研究目的には、分子認識に活用できる磁性流体用の活面活性剤の検討も含まれる。市販の脂溶性磁性流体(活面活性剤:オレイン酸、エリカ酸、ステアリン酸)及びオレイン酸の上へ第二層としてポリエチレングリコールラウリルエーテルをのせて水溶性にした磁性流体を研究室で試作した。A^+_rレーザーの488nmの発振線を光源として12種類のケイ光色素の挙動を調べた。又印加磁場によるケイ光強度変化は、溶媒、磁性流体濃度に対して最適条件を検討した。この結果自作した水溶性磁性流体を用いた場合、ローダミン骨核をもつケイ光色素が大きく変化することを見い出した。特にKiton Red620は硫場と平行の偏光ケイ光が、硫場を加えない時の2.5倍以上に増大した。この偏光ケイ光の強度変化は、ローダミン核につく炭素鎖の長さと対応していることがわかった。ケイ光のスペクトル変化はそれ程認められなかった。
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