亜硝酸と溶存酸素の凍結時に起こる反応の反応機構について基礎的な検討を行った。まず、通常の速度論的手法を用い、つまり、偽一次反応条件下で反応物質の初期濃度を変化させて凍結による反応速度を求め、反応次数を求めた。その結果、溶存酸素濃度に対し1次、N(III)に対し1次となり、pHには依存しなかった。更に、詳しく調べた結果、亜硝酸に0.5次、亜硝酸イオンに0次となる結果が得られた。N(III)に1次、亜硝酸に0.5次という矛盾について調べた結果、初期濃度が異なると凍結時の反応場への濃縮効果が異なる事が分かり、さらに、この反応速度が凍結速度に比例する、つまり、凍結速度律速であることもわかった。つまり、反応次数を正しく求めるためには、凍結速度が律速とならないように速く凍結しなければならないことが分かった。 電位差測定では十分に測定結果は得られなかったが、得られた定性的な結果と、凍結時の固液分離の結果および添加塩の効果などから、凍結による反応促進効果は氷結晶の成長時に起こるイオン分離に基づいて発生する静電場による反応場である固液界面への濃縮によるものであることが推察された。また、環境中における凍結の寄与について、酸性雨、霧、雪のサンプリングを行い、それらに含まれる亜硝酸の濃度を測定し、実験室内においてそのサンプルのバルクおよび霧状にしたものについて凍結を行い、硝酸への変化を調べた。その結果、試薬を用いて調整した試料と同程度の変化が起こり、霧状のものはバルクのものより反応が進むことが分かった。次年度は、初年度に得られた結果を定量的に取り扱い、上記の推論を確かなものにするとともに、環境中において凍結が化学反応にどの程度寄与するのか実際にフィールド測定する予定である。
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