研究概要 |
初年度の研究成果で凍結による反応促進効果は,氷成長時に起こるイオン分離に基づいて発生する静電気力による固液界面への濃縮によるものであることが推察された。本年度はこのことをさらに明らかにするために,反応を妨害する塩を加えたときと加えていないときの凍結途中の固-液分離を行ってそれぞれに含まれるイオンの濃度を求めた。その結果,凍結を妨害する塩を加えた場合は,氷相に陰イオンが陽イオンより多く含まれており,妨害塩を加えない場合は氷相の陽イオン濃度の方が高いことがわかった。これは界面に亜硝酸イオンを濃縮するのに氷相が正になっていることが必要であると予想したとおりであった。また,凍結速度律速であることを確かめるため,つまり,氷界面の大きさに関係していないことを確かめるために単結晶の氷を作製して反応を調べることを試みた。数多くの試みの中で完全な単結晶はできなかったものの,結晶の数の少ない氷を作製することができた。その結果,反応が大きく妨害されることがわかった。また,初年度に推察したように反応場が固-液界面であるということは,結晶粒界であるということができる。 フィールド測定では,現地で霧を凍結しながらサンプリングを行うことには成功しなかったものの,得られた資料のうち数個に100mumol/L以上の亜硝酸イオンが検出された。このときのpHは3前後であり,この雨が凍結することによりpHが0.1以上低下することがわかり,実際にも凍結過程が雨の酸性化に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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