研究概要 |
クローバ根粒菌(Rhizobium属)4S株を宿主とする溶原性ファージphiUは、ファージDNA上のattP部位と宿主菌染色体上のattB部位とで特異的組換えを起こし、ファージDNAが宿主菌染色体にインテグレートすることで溶原化する。この性質を利用してRhizobium属根粒菌においては巨大プラスミド上に存在する根粒形成遺伝子群をBradyhizobium属根粒菌のように染色体に安定にインテグレートさせることを試み、その発現について検討した。 phiUのattP部位を根粒菌内では自己複製不能なpSUP202にクローニングし、組換えプラスミドpC16(14kb,Mch,Tc^r,Ap^r)を得た。pC16を大腸菌よりクローバ根粒菌4S株へ接合伝達し、テトラサイクリン耐性(Tc^r)で選択したところ、高頻度でTc^r株が出現した。サザン法による解析にて、Tc^r株では、本来phiUが溶原化する位置にpC16がインテグレートしていることが明かとなった。また、他の根粒菌属菌株の染色体へのpC16のインテグレートについて検討したところ、エンドウ菌株のK5株の染色体にも高頻度でインテグレートすること、また、インテグレートする位置の制限酵素地図は、32kbの範囲でクローバ根粒菌4S株と全く同一であることが明かとなった。 次に、クローバ根粒菌の根粒形成遺伝子群(nod-genes,14kb Hin dIII断片)とファージphiUのattP部位を併せ持つプラスミドpCINod1を構築した。4S株由来の根粒形成欠損株であるH1株の染色体にpCINod1をインテグレートさせCNH1株とした。CNH1株は、クローバに野生株4S株の5倍程度の多数根粒を形成し、根粒内には感染糸及びバクテロイド化した根粒菌が観察された。このように、通常はプラスミド上に存在するnod-genesを安定に染色体上にインテグレートさせ、充分に発現・機能させることが可能となった。
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