研究概要 |
成長阻害ペプチド(Growth-blocking Peptide,GBP)は、元々、寄生蜂によって寄生された宿主アワヨトウ蛾終齢幼虫血清から精製・構造決定された生理活性ペプチドであり、例えば、数pmoleのペプチドを未寄生アワヨトウ幼虫終齢初期に、2度注射することによって体重増加及び血清JHesterase活性上昇を著しく抑え、最終的には蛹化遅延を誘起する。本研究においては、GBPの合成起源と合成器官の特定、さらには、その誘導のメカニズム解明を目指した。 その結果、先ず、起源については、アワヨトウ幼虫蛋白質成分の分析からGBPは未寄生若齢幼虫血清中に存在するペプチドであり、寄生された場合のみ、終齢においてもある一定濃度以上存在することが分かった。 さらに、GBPのアミノ酸配列に対応するオリゴヌクレオチドプライマーを作成し、鋳型としてアワヨトウ幼虫及び寄生蜂に共生するpolydnaウイルス(寄生時に卵と共にアワヨトウ体内に注入され、その寄生成立に不可欠)のゲノムDNAを用いてPCRを行った結果、アワヨトウ幼虫ゲノムDNAでのみ約220bp付近に一本の明瞭なDNAが増幅された。 従って、やはり、GBPは宿主アワヨトウが本来持つペプチドであることが明らかになった。また、合成部位については、各種器官からペプチド成分を調整してその生理活性を調べた結果、中腸細胞にGBP様活性が存在することが明らかになり、現在、その活性を指標にGBP様活性成分を精製しようとしている。 さらに、アワヨトウ終齢幼虫血清へのGBP誘導は、本来の寄生蜂による寄生のみならず、寄生蜂の共生ウイルス粒子の注射のみによっても誘導されることが明らかとなり、現在、このウイルスがどのようにGBPの合成又は分泌を促すものか? そのメカニズムについても検討中である。
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