研究概要 |
ダイニンATPaseと微小管の相互作用はシングレット微小管を用いたin vitro motility assay systemによって、分子レベルでの解析が現在さかんに行われている。しかし、鞭毛・繊毛運動の解析には、この素過程を基礎としたより高次レベルでのin vitro motility assay systemによって、解析しなければその解明は難しい。 本研究は、より高次のsystemとしてダイニンをコートしたslide glass上でのダブレット微小管のmotility,シングレット微小管にダイニンを予め結合させたcomplexの形成とそのmotility,complex bundleの形成とそのmotility、などのsliding movementを比較することによって、より高次の構造をもつ鞭毛・繊毛運動の特質を明かにしたい。 1)テトラヒメナ繊毛軸糸よりダブレット微小管、22Sダイニンを単離し、スライドグラス上にダイニンをコートしたin vitro再構成運動系でダブレット微小管のsliding movementを暗視野顕微鏡を用いて解析した。単離したダブレット微小管は弓状にカーブした形を持つので、スライド上では、tip側を先頭にしてsliding movementを行うがその軌跡は円となる。円を画く方向一一右回りか、左回りか、一一には特に規則性はなかった。しかし、Ca濃度を変えて調べると、ATP濃度に依存して、運動が変化することがわかった。特に、pCa3ではsliding movementは起こらないし、pCa9では高濃度のATP(500 uM--1 mM)では運動は起こらない。 この結果は、鞭毛や繊毛運動で以前から報告されているCaによる運動の制御の分子レベルでの成果として特筆に値する。Exptl.Cell Res.203、483-487(1992)にpress済みである。 2)microtubule-dynein complexについては、すでに3種類のcomplexの生成が可能となっている。この3種類のcomplexからのシングレット微小管のsliding movementついては、運動を引き起こすことに既に成功している。現在 dataを解析中である。
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