本研究は、イシサンゴにおいて機能的な組織適合性がいつ発現するのかを明らかにすることを主な目的とする。今年度は、ハナヤサイサンゴの幼ポリプを用い、遺伝的に異なる幼ポリプ間の接触反応にどのようなパターンがあるのか、接触反応はプラヌラ底着後接触までの時間によって変化するのか、また幼ポリプの示す接触反応は時間とともに変化することがあるのかを調ベた。 接触反応には瘉合、非瘉合、組織非適合の3つのパターンがみられた。瘉合したポリプでは、組織、骨格とも完全に瘉合したが、非瘉合のポリプペアーでは、接触部に骨格の壁が形成され、両組織は不連続であった。 組織非適合のポリプでは、接触面において両組織は連続しているように見えるものの、境界部に共生藻の少なくなった白い領域が見られた。また両ポリプの骨格は連続しているものの、突起状構造が互いに向かいあい、瘉合ポリプとは異なっていた。白いゾーンが周りの組織を侵食しながら拡大していく現象が見られた。両ポリプの親群体の組み合わせと接触時期が同じであれば、すベてのペアーは同じ接触反応を示した。しかしある組み合わせでは、早い時期に接触させた場合には組織非適合反応を示すものの、遅い時期に接触させると非瘉合を示した。また瘉合や非瘉合を示したペアーでは、接触反応はその後長期間観察を続けても変化することはなかったが、組織非適合を示していたペアーの多くは、2〜4ヶ月後非瘉合へと移行することが観察された。 今回の実験より、接触反応はペアにしたポリプ間の遺伝的関係によって決まること、接触反応が時間により変化する場合のあることが分かった。ポリプ間の遺伝的距離をアロザイムの電気泳動により推定すること、組織非適合を示すポリプペアーの境界部の微細構造を観察することを次年度に行う予定である。
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