研究課題/領域番号 |
04804067
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
廣井 美邦 千葉大学, 理学部, 助教授 (40019427)
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研究分担者 |
土屋 範芳 東北大学, 工学部, 助手 (40207410)
津久井 雅志 千葉大学, 理学部, 助手 (50192191)
飯山 敏道 千葉大学, 理学部, 教授 (90107699)
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キーワード | 阿武隈変成岩 / 造山運動 / 移動速度 / 温度・圧力条件 / 深度 / 地殻 / 年代測定 / 流動 |
研究概要 |
造山運動の際、地殻内部、特に中ー下部地殻において岩石はどれくらいの速度で移動するのであろうか。これを、白亜紀に形成された阿武隈変成岩を用いて研究した。それは、最終的には低圧型になった竹貫変成岩と呼ばれる高温の変成岩群が、一時、高圧条件下におかれたことを示す痕跡がよく残っているからである。各種の地質温度・圧力計を用いて変成条件の変化値を精密に決定するとともに、広域変成作用の期間を限定するために、オーストラリア国立大学のSHRIMPと呼ばれるイオンマイクロプローブで2種類の変成岩(竹貫泥質片麻岩と御斉所変石英斑岩)中のジルコンの年代測定を行なった。その結果、広域変成作用は122Ma以降に始まり、117Ma以前にはほぼ終了していたことが明らかになった。したがって、竹貫変成岩は約700℃の高温条件下で、約3kbの加圧と約6kbの減圧とを500万年以内の短期間に被ったことが判明した。圧力値を深度に換算すると、500万年以内に約33kmの深度変化があったことになり、年平均で7mm以上の速度で岩石が地殻内を移動したことになる。これは垂直方向だけの成分であり、水平方向の成分を加えると年平均10mmを優に越えるであろう。約700℃という高温条件のため、一般に岩石は塑性変形(流動)しやすくはなるが、実際は、岩石の部分溶融によってそれがさらに促進された可能性が高い。今後の問題として、高温の変成岩が部分溶融していたかどうかを判定するための明確な基準の設定が急務である。また、各種の造岩鉱物、特に多成分系固溶体鉱物内での元素の拡散の機構と速度の決定も重要であろう。これらの問題についても、本研究において取り組みを始め、重要な成果を得つつある。
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