液晶異常過渡光電流の発生原因を、液晶の非線形光整流効果に基づく光起電圧により説明した。 光整流効果は、液晶層への入射光の差周波数効果としてとらえられる。すなわち、光起電圧効果としての内部電圧の発生につながる。これが、液晶異常過渡光電流の発生機構である。実験的にも理論的にも、非線形光学効果により異常過渡光電流の発生機構を明確にすることができた。 液晶媒質内の刺激伝搬機構の解明を試みた。まず、一般的なポリイミド配向膜を有する液晶セルの電気的過渡応答減少を明確にするための4定数回路(配向膜の静電容量と誘電損失、および液晶層の静電容量と抵抗分からなる等価回路)モデルを提案し、種々の外部印加電圧波形に対する、液晶層への実効電圧を解析的に明らかにした。また、本解析法に基づき、三角波の周波数変調方式による液晶光スイッチング動作が可能であることを実験的に確認した。 さらに、ラビング処理に伴う、配向膜表面の誘起電荷と液晶分子の相互作用について理論的な解析を試みた。この結果、外場の存在しない場合、配向膜表面の摩擦電荷による誘電エネルギーと液晶層の弾性エネルギーの最小条件より、液晶の誘電率異方性の正負の値のいかんに拘らず、液晶分子は平行配向を取ろうとすることを明らかにした。 次に、配向膜と液晶とのアンカリングエネルギーが分子配向に与える効果を詳細に検討した。すなわち、TN構造の液晶セルのフレデリクス転移を表す一般式を導出した。また、液晶単分子膜の膜圧縮過程における層転移現象を双極子配向モデルにより理論的に説明するとともに、実験結果との対応から理論の妥当性を明らかにした。 最後に、変移電流の発生機構の解析結果より、液晶材料の回転粘性係数を測定できることを実験的に明らかにした。
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