本研究は流体の相変化(蒸発・凝縮)機構および相変化速度を分子レベルで扱う理論的・実験的方法を提案したものである。 まず、理論においては、分子気体力学解析に基づく気-液界面での境界条件を用いて、一次元および二次元ナビエ・ストークス方程式をそれぞれ特異摂動法および差分法の二種類の方法により解き、反射衝撃波背後の衝撃波管管端面および管側壁面上で凝縮が生じている場合の気体力学理論解析を行った。これらの理論解析により、管端面上で凝縮により成長する一様な液膜の成長速度の測定から、蒸気分子の付着確率を求めることが可能となった。さらに、化学反応論に基づき、相変化速度および付着確率の理論解析を行い、付着確率が蒸気のみならず液体状態での分子の内部運動に関係していることを明かにした。 いっぽう、実験においては、平成3年度に設置された分子流体力学実験装置(反射型衝撃波管)の性能試験を完了させるとともに、研究に必要な各種計器類を整え終えたところである。相変化の研究には実験装置の高い真空度が要求されるため、この点についてはとくに注意して装置を製作し、どのような条件においても5x10^<-5>mmHgの高真空度が得られることを確認した。その結果、本装置が研究目的を達成するのに十分な性能を有することを確認した。実験に関しては予定よりも少し進展が遅れているが、実験の生命ともいえる装置の性能に関しては予期以上の成果が得られており、研究期間内に計画を滞りなく遂行できるものと考えている。
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