研究概要 |
平成5年度の研究はおおむね当初の予定通り進めることができた.本研究は過重力場における液滴蒸発の熱流動機構を明らかにすることを目的としており,第1年度で製作した遠心式の疑似過重力場形成装置を用いて実験を行った.また,本年度は前年度の研究結果を踏まえ,落下する液滴の量を精密にコントロールできるステッピングモーターとマイクロシリンジからなる遠隔式の液滴落下装置を製作して,実験精度の向上をはかった.さらに,燃焼を伴った液滴の壁面蒸発実験を行い,燃焼時間や液滴の寿命に対する過重力場の影響を明らかにした.主に得られた結果を以下に示す. (1)毎回の実験で落下させる液滴の体積を均一にし,精密な実験を行った.これにより,前年度の方式では行うことができなかった,ベンゼン,ヘプタン,メタノール等の低沸点燃料に関するデータを獲得することができた.これらの燃料における寿命曲線の過重力場の大きさによる変化は前年度で示された結果と一致した.すなわち,過重力場の大きさが増加するのに従い,寿命は大幅に減少することがわかった. (2)過重力場における液滴の変形挙動を理論的に解析し,過重力場の大きさの増加に伴う寿命時間の減少が液滴底面積の大幅な増大によって生じることを確認した. (3)過重力場で蒸発する燃料液滴に強制着火させる実験を行った結果,過重力場の大きさが大きくなると(G=8以上)燃焼の途中で吹き消えが生じることがわかった.これは,重力加速度が大きいために燃焼によって生じた自然対流が強くなり,液滴の蒸発量が減少すると火災が保持できなくなるためと思われる.
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