研究概要 |
本年度は,昨年度一部結果を得ていたベクトルポテンシャルによる分散性媒質特性の取扱いの一般化を進め,配向分極,共鳴吸収型分極さらに非磁化プラズマに対するそれぞれの基本特性式の台形近似による定式化に基づく計算結果が解析解と一致することより取扱いの妥当性を確かめた.なかでも,非磁化プラズマ特性は無損失の場合,台形近似式が超電導特性のそれと同じ形式をもつという興味ある結果が導かれ,ベクトルポテンシャルによる定式化が様々な媒質特性の本質的な機構をより直接的に表示できることが確かめられた.一方,共鳴吸収特性の扱いは電磁界と量子効果を含めたデバイス材料特性の結合の基本をなし,逆の能動デバイス特性であるメーザーやレーザーの原理とともに,量子論的には準位間遷移による電磁界エネルギーの吸収および放出機構でそれぞれ説明される.その結果,放出機構も古典論的に反分極(反磁化)特性で,すなわちこれまでの共鳴吸収特性の扱いで分極率を負にすることで扱えることを本年度の研究で新たに示し,これらの成果は3月末開催の1994年電子情報通信学会春季大会や6月にシアトルで開催の1994年米国電気電子学会のアンテナ・電波部門大会で発表予定である. 一方,これまで定式化はその理論的証明の厳密さを実現するため空間回路網法で行なってきたが,実際の解析では有限時間差分領域法(FD-TD法)も有効であり,上述の各分極の扱いを含めてベクトル場やスカラー場の扱い全体をFD-TD法でもコーディングを行い,その成果は9月開催の1993年電子情報通信学会秋季大会や11月開催の1994年電気学会電磁界理論研究会シンポジウムで発表した.
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