研究概要 |
本研究では,透明プラスチックへの旋光性の付与とそれを用いる導波路型光機能素子の開発について検討した.旋光性付与の方法としては,(1)トリフェニルエタノジオールを光学活性材料としてポリマー重合時に加える方法,(2)反磁性を示すベンゼン基をもつモノマー(ここではベンジルメタクリル酸を使用)とそれを有しないモノマー(メチルメタクリル酸)の共重合による方法,の2通りを試みた.その結果,(1)の方法で,旋光能20deg/cm程度の光学活性透明プラスチックが得られること,および,(2)の方法で,ベンジルメタクリル酸の重量比すなわちベンゼン基の数によって磁気旋光性が増加することなどが明らかとなり,透明プラスチック中の相反,非相反いずれの旋光能の大きさも制御できることを実験的に得た.しかし,そのドープ量や重量比が30%を越えると散乱損や複屈折が大きくなることもまた明かとなった. 次に,この旋光性プラスチックによる薄膜光導波路を作成し,光機能素子としての応用を試みた.例えば,薄膜導波路型光アイソレータなどにおいては,非相反型光モード変換部と相去型光モード変換部の組合せが必要となるが,ここではその基礎として,旋光性高分子薄膜導波路による相反型モード変換器の動作実験および解析を行った.この素子は上述の(1)による旋光性プラスチックをガラス基板などにコーティングして作成したが,これに波長441nmのHe-Cdレーザ光を端面結合で導波させたとき,導波路長40mm程度で約70%のTE-TMモード変換が実現できできた(応用物理学会講演集).現在のところ伝搬損は5〜7dB/cmと大きいためその低損失化を図っていく必要はあるが,従来のものと比較して格段に安価で素子作成も容易などの特徴を有するため,実用的価値も高いものと考えられる.
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