活性汚泥法に腐植質土壌をリアクターとして用いた下水処理場では、処理場特有の悪臭がほとんどなく、かつ、清浄な処理水が得られている。この処理システムを用いている松本市島内団地合併浄化槽の機能調査は既に終了し、報告している。今年度の主たる研究は、島内団地合併浄化槽と同じ処理システムを取り入れている長野県山ノ内町水質浄化センター(終末処理場)について、運転開始時からの処理効率を解析するとともに、3回実施した24時間連続測定の結果の検討を行った。その得られた知見として特徴的な結果をまとめると以下のようになる。 (1)運転開始時からの処理効率 (1)処理水BODは3mg/1前後、処理水COD_<Mn>では10mg/1以下である。 (2)処理水SSはほとんど5mg/1以下であり、その透視度は1m以上である。 (3)処理水の一般細菌数は、リアクター設置後にほぼ1年ごとに1/1000に減少している。 (4)発生汚泥量は除去SS量の半分以下であり、生汚泥は放置していても臭気は発生しない。 (2)24時間連続測定 (1)曝気槽内のDOが0mg/1付近でも処理水BODに悪影響がないため、通常の活性汚泥に比べ送気量は半分程度(10〜20m^3/Kg-BOD)でよい。 (2)濃縮汚泥の比抵抗は、通常の汚泥の調質後の比抵抗にほぼ等しい。このため、無薬注で脱水が可能であり、汚泥乾燥床で乾燥した場合、2〜3日で乾燥が終了する。 (3)処理場全体、特に、汚泥処理系からの臭気がほとんど発生しない。 腐植質土壌をリアクターに用いた下水処理法は、従来の活性汚泥法の知見だけでは説明出来ない部分が多いため、今後さらに実例の調査研究を続ける必要がある。 その他の研究として、(1)臭気改善を目的に本処理システムで発生した汚泥を浄化槽に投入する実験(栃木県那須)および (2)小規模下水処理場から発生する生汚泥の悪臭防止に腐植土壌ペレットを利用する施設改善(長野県真田)についての調査を開始した。
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