この研究は、大空間を薄膜を使用して架構する膜構造の設計に当たって必要となる原型曲面の形状を定量的に求めるための研究であり、大きく分けて2つの柱からなっている一つは、1)石鹸膜を利用して等張力曲面を作成し、その曲面形状をヘリウム・カドミウムレーザーを用いて可視化し、画像処理過程を経て定量化するものであり、他の一つは、2)有限要素法を用いた極小曲面の解析法の開発である。 1)に関して、ヘリウム・カドミウムレーザーを光源とするレーザービームスキャナーによって、石鹸膜にスキャニング照射を施し、その結果、蛍光発光させることにより可視化された石鹸膜の断層曲線群を、高速度ビデオカメラで撮影し、画像解析システムを用いて、採取したビデオ画像データをデジタル画像メモリーに取り込み、断層データ中のスケルトン部分の画素座標値データを数値的に発生するアルゴリズムを考案して、解析プログラムを作成し、目的の石鹸膜等張力曲面形状を定量的に復元する過程を開発した。 2)に関して、膜構造物の設計に際しての原型曲面を理論的に求めるために、既に作成した有限要素法を用いた極小曲面の解析プログラムに大幅な改良を加えることにより、非線形計算過程の収束性能を向上させることに成功している。この解析過程は従来の曲面の内包体積を変分汎関数に付帯条件として導入し、制御変数として解析過程の安定を図ることに併せて、未知量である各要素の節点の空間座標に線形関係の成立を仮定するもので、幾何学的には非線形計算の各ステップで各節点の移動方向を予め設定することに対応する。この改良によって計算効率を10倍以上に上げることができるようになった。 複数台の同期されたカメラ撮影による採取画像データの高精度化が今後の検討課題である。
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