研究概要 |
本研究で提案した太陽熱膜電池は,太陽熱蒸留器とイオン交換膜を利用した淡海水直接発電装置(透析電池)を組み合わせた新型の発電装置である.このようにすることによって,透析電池の利便性をさらに高めると共に,発電効率も上げることができるものと期待される。本年度の計画では,透析電池部分について予備実験段階で製作したものよりもさらに大型化した装置を作製し,その性能試験を行うことによって,大型化による効果を明らかにすることを目的とした.結論を先に述べるなら,当初の計画はほぼ達成されたと言える.以下では,装置の概要,得られた結果について述べる. 今年度新たに製作した透析電池はその基本的な構造に関しては旧型装置とほぼ同じである.しかし,その大きさについては大幅な大型化が図られた.すなわち,イオン交換膜の対の数は旧型に比べて約1.5倍の50対であり,さらにイオン交換膜の有効膜面積は6.0倍の480cm^2である.この新装置について,1)開放電圧V_0の淡水流量m_f,動作温度t依存性,2)負荷低抗R_Lによる消費電力Wのm_<f,>t依存性を測定して,その適正淡水流量,最大出力W_<max>,装置の内部抵抗R_iを求め,それらを旧型の装置で得られている結果と比較することにより大型化による効果を検討した. その結果,1)大型化によって装置の動作に関する安定性が向上したこと,2)v_0はほぼ1.6倍(室温で約7V)となり,また装置の能力を十分に引き出すためには300ml/min以上の淡水が必要であること,3)V_0の温度に対する依存性は小さく,温度の上昇によって小さな増加を示すこと,4)W_<max>は3倍以上(50℃で780mW)が得られたこと,さらに,5)R_iは旧型に比べてほぼ1/3(50℃で8Ω)と当初の予定通りの結果が得られている.今後,この装置に見合った規模の蒸留器の製作をし,太陽熱膜電池としての性能試験に移る予定である.
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