1.分子軌道法による凝集エネルギーの計算により、ボロン系において、α菱面体晶型準結晶が安定に存在し得ることが分かった。この結果と結晶学データを用いて、準結晶組成をボロン-炭素系で炭素濃度が9at.%以下と予測した。この組成領域で、アモルファス相のアニールにより、正20面体準結晶の新しい近似結晶を発見した。これは、ボロン系における半導体準結晶の開発に一歩近づいたことを意味している。2.石英管とタンタル管の2重管を用いることにより、β菱面体晶ボロンへのリチウム・ド-ピングに成功した。同じ手法を用いて、バンド計算により超伝導が予測されているα菱面体晶ボロンへのリチウム・ド-ピングを試みている。3.β菱面体晶ボロンの構造が、サッカーボール・クラスターを菱面体の頂点に持つことから面心立方カーボン60の構造との類似性を明かにした。βボロンの場合はリチウムおよび銅を数at.%までドープしても、電気伝導は半導体的であり、磁化率も反磁性に留まり、カーボン60の場合とは異なることを明らかにした。電気伝導率の温度依存性が可変領域ホッピング型であること、磁化率がほとんど変化しないことから、ドープされた電子は、ボロンの正20面体クラスターに起因する内因性アクセプター準位に入り、局在準位間をホップするが、電子・格子相互作用により有効な電子間相互作用が負になっているというモデルを作った。4.β菱面体晶ボロンの光学吸収端スペクトルおよび温度依存性を測定し、内因性アクセプター準位から伝導帯への吸収が、分子軌道法による遷移確率の計算と一致して、禁制となることを確認した。フォトルミネッセンス・スペクトルを初めて測定し、スペクトル位置や強度の温度依存性から、最も高エネルギーの電子トラップ準位から内因性アクセプター準位への発光であることを明らかにした。
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