研究概要 |
本研究では,新しい金属加工法として注目されつつある金属粉末射出成形技術を用いた高密度で高性能な焼結合金鋼の開発を目的とし,まず平成4年度では4600系鋼種(Fe-1.8Ni-0.5Mo-0.2Mn)について,粉末特性の違いによる成形や脱バインダおよび焼結の各挙動の相違について検討した。成形に関しては微細球状合金粉末(平均粒径12μm)の方が粗粉末(平均粒径36μm)に比べ容易であった。脱バインダ法としては溶剤による抽出と加熱による揮散を組み合せた方法により、脱炭組織もみられず良好な脱バインダを施すことができた。なお,鋼の特性に決定的な残存炭素量は加熱揮散時の雰囲気中のH_2濃度に依存するが,脱バインダ前後の重量損失割を制御することによって精確な炭素量を得ることができた。合金微粉末を用いた焼結材およびその熱処理材の機械的性質は同組成の混合微粉末のそれと比較して,強度的には従来の粉末冶金法によるものより両者ともに優れていたが,延性の点で前者は劣っていた。これは緻密化が不十分(相対密度で93〜94%)であったとともに,組織の違いに寄因しているものと考えられた。すなわち,合金粉末と混合粉末では,後者の方が合金元素の不十分な拡散に伴う不均質な焼結組織となり易いが,その機械的性質は同一密度の合金粉末材より優れていることが判り,この点を確認するため,平成5年度では機械構造用焼結合金鋼としてNi-Mo系およびCr-Mo系の鋼種について,前年度と同様の追跡調査を行った。とくにCr-Mo系の合金粉末には炭素が含有されていないことから,合金鋼を作製する上で工夫を要したが,脱バインダ時の雰囲気にCOガスを用いることで正確な炭素量制御を行うことができた。Ni-Mo素については混合法を採用したが,予想通り,Niの偏折に伴う不均質焼結組織となり大幅な機械的性質の向上を得た。以上,本研究により鉄系焼結材料の高性能化に関し、有効な指針を得ることができた。
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