本年度は、水素原子の供給源として使用した炭化水素の構造変化に関する研究を主体に行なった。 対象とした金属元素は、チタン(4A族)とニオブ(5A族)である。水素供給源としては、潜熱、引火点、発火点などの安全性と、酸素原子を含まない飽和炭化水素という選択則から、テトラリンを選んだ。上記金属元素とテトラリンを所定のモル比に配合し、SPEX8000偏心振動ミルを用いてミリングし、メカノケミカル反応を誘導した。 テトラリントを選択したことにより、(1)誰でもが、(2)安全に、(3)室温下で、金属水素化物を合成することが可能となった。反応時間としては、前年度の500時間を50時間と約1/10にまで促進することができた。 次に、逆反応として脱水素されたテトラリンの構造変化(単純脱水素、縮・重合、開環など)の可能性をガスクロマトグラフ及びガスクロマトグラフ質量分析器を用いて調べた。その結果、転換種はナフタレンであることが指摘され、反応は単純脱水素反応であることがわかった。 次に、テトラリン→ナフテレンの転換率の定量解析を行なった。この結果、得られた値は、予測転換率の約1/5であった。これは、水素放出した後のナフタレン基が、金属水素化物粒子から解離せず、粒子表面を化学修飾する状態で吸着していること理解された。
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