研究概要 |
1.ポリメタアクリレート(分子量5千及び30万)とポリエチレンオキサイド(分子量6千および30万)とのポリマーブレンドフィルムを作成し、磁気分子であるタノールを混入した。得られた試料を45℃でESR(電子スピン共鳴)測定し、熱処理による変化を測定した。-10℃以下の熱処理により分子運動の速い領域が減少した。また60℃以上の熱処理により、逆に分子運動の速い領域が増加した。これらの事実は高分子の収縮と伸張によるいわゆる自由体積の消減と生成を分子レベルで観測できたことを示す。 特に高分子どうし (30万,30万)のブレンドでは自由体積の生成の温度域が80℃と高温域にシフトし、異種分子どうしの絡み合いの効果が大きく影響することが明かとなった。 2.ポリテトラフルオロエチレンの機械的破壊を真空中、液体窒素温度で行ない、エチレン分子を共重合させ、その末端にニトロソベンゼンで磁気分子ラベルすることに成功した。その分子運動はポリエチレン媒体における運動性に比し非常に速い。また熱処理により極端に運動が速くなること、(分子運動の転移点が約100℃低温にシフトする)運動速度が共重合鎖濃度に依存することなどが観測された。これらの事実はポリテトラフルオロエチレンとポリエチレンとの相溶性が悪く、ポリテトラフルオロエチレン表面にポリエチレン鎖が分子鎖濃度の低い状態でつったっていること、熱処理により分素鎖の絡み合いがほどけた一分子状態になることを示し、高分子表面における非常に大きい自由体積が観測されたことになる。
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