(1)購入した光子相関計(大塚電子DLS-7)を現有の固体用光散乱装置(自作)に組み合わせ、高分子ゲル測定用動的光散乱装置を製作した。 (2)標準試料(ポリスチレンラテックス)を用いた装置の性能検査を行った。広い角度範囲(30度から90度)、広い温度範囲(20゚Cから70゚C)において単一緩和をもつ時間相関関数および一定かつ精度良い粒径が得られ、光子相関計および光学系の設定が良好であることが確認された。 (3)次に、種々の架橋密度を持つアクリルアミドゲルを調製し、その相関長および非エルゴード性の程度(相関関数における動的成分の静的成分に対する割合)を測定した。その結果、架橋密度の増加に伴い、相関長が増大し、一方では非エルゴード性の程度が大きくなることが認められた。 (4)感熱型ゲルのN-イソプロピルアクリルアミドゲルを調製し、温度変化に伴う相関長の変化を測定した。その結果、相関長はゲルの臨界温度(34.2゚C)に向かって発散し、体積相転移することが観察された。 (5)ポリビニルアルコールゲルについて同様の実験を行った結果、非常に長い緩和時間が得られた。これはゲルの種類により構造が全く異なることを意味している。 以上のことより、動的光散乱によりゲルの非エルゴード性の評価が可能であることが認めらた。当該年度では装置の製作と性能評価が中心であったが、今後、散乱強度のアンサンブル平均と時間平均をそれぞれ測定し、非エルゴード性の定量化を行う。次にこの手法を種々のゲルに適用し、非エルゴード性の観点から構造とゲルの物性を研究する。
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