1. 研究目的 タンパク質の両性電解質としての特性を生かした新しい高速分離法を確立することを目的として、濾液の流れ方向を重力の方向と逆にする上向流限外濾過に直流電場を作用させて行ういわゆる上向流電気限外濾過法を提案し、その有効性を実証するとともに、その分離特性に及ぼす諸因子の影響を検討する。 2. 研究の経過、成果ならびに考察 (1) 牛血清アルブミン、リゾチーム等のタンパク質溶液を対象として上向流電気限外濾過法の有効性を検討した。本方法によれば、電気泳動作用によりゲル層の成長が阻止されるとともに、ゲル層内に生ずる電気浸透効果により、単なる上向流濾過に比べて濾過速度がかなり増大することを明らかにした。 (2) 牛血清アルブミンとリゾチームの2成分系タンパク質溶液を対象として、両者が相異なる界面動電位を有する溶液環境において上向流電気限外濾過を行い、両者の分離が可能なことを示し、最適操作条件を明らかにした。 3. 今後の問題点 タンパク質溶液に対して上向流電気限外濾過がかなり有効であることを明らかにしたが、その最適操作と設計の指針を確立するために、ゲル状ケーク層の剥離機構をさらに詳細に検討して濾過機構を明らかにする必要がある。 4. 設備備品の利用状況 分光光度計は濾液中のタンパク質濃度の測定、可変ポンプは濾過器への試料液の供給、マグネチックスターラーおよび振とう器は試料の調製、撹拌型ウルトラホルダーは濾過性能の比較のためにそれぞれ利用した。
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