キュウリモザイクウイルスY系統[CMV(Y)]は、バーレー種(緑黄色変異種)に属するタバコ品種Ky57の接種葉に激しい黄色病斑(強黄色斑)を示すことをすでに明らかにしている。このKy57をCMV(Y)接種葉に極めて弱い黄色病斑(弱黄色斑)を示す品種Xanthi ncと交配し、雑種後代について、CMV(Y)接種葉における病徴型の分離を調べるとともに、バーレー種の表現型のひとつである白色の茎の分離についても合わせて検討を行った。その結果、雑種第1代(F1)は、すべて弱黄色斑に緑色の茎を示し、雑種代2代(F2)は、弱黄色斑/緑色茎と強黄色斑/白色茎の個体が約15:1に分離した。また、F1をXanthi ncに戻し交配した場合は、得られた個体が全て弱黄色斑/緑色茎を示したのに対して、F1をKy57に戻し交配した場合は、弱黄色斑/緑色茎と強黄色斑/白色茎を示す個体が約3:1に分離した。白色茎の出現を支配しているバーレー遺伝子は2重劣性遺伝子であることがすでに明らかになっている。一方、本研究においては、CMV(Y)接種葉の強黄色斑と白色茎の出現の間には完全な連鎖関係が認められたことから、CMV(Y)接種葉における激しい黄色病斑の発現を支配している遺伝子は、バーレー遺伝子自体ではないかと考えた。現在、バーレー遺伝子を単離する目的で、バイナリーベクター系によりカナマイシン耐性遺伝子(Km gene)をKy57に導入し、緑色の茎を示す個体(バーレー遺伝子がKm geneでtaggingされた個体)の選抜を行っている。
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