クワ(Morus alba L.)の生長生理と樹形形成に関連する分枝形成の特性の1つとして、枝(長枝、短枝)の生長停止に伴う頂芽あるいは枝先の脱離(不定脱離、節間脱離)を見出して、以下の点を明らかにした。 1.この脱離は、これまで研究に用いてきたMorus alba以外のクワ属(M.bombycis.M.lohuなど)と、それらの幼木、成木のいずれにも見出されることから、クワ属に特有の性質であることが分かった。 2.低幹仕立てのクワ1年枝(古条)の切り枝の水挿しによっても、ほ場のクワの場合と同様に上位新梢が優勢生長(梢端優勢生長)したが、下位新梢(短枝)の枝先脱離は起こらなかった。一方、ほ場のクワの短枝形成には、消端優勢生長のほか、下位新梢間の競合(相互阻害)も関与し、さらに短枝形成と同時期に母枝(古条)が肥大生長を始めることも分かった。したがって、これらの側枝生長に対する強い生長阻害によって、短枝の枝先脱離が引き起こされると考えられた。 3.萌芽前あるいは萌芽時に1年枝を横臥枝化すると、下側に置かれた側芽の生長を著しく阻害された側芽脱離をを引き起こしたり、伸長しても矮小枝を形成して枝先脱離することが分かった。これらの脱離には重力ストレスにより誘導されるエチレン生成が関与すると推定され、このことについて検討する予定である。 4.クワ1年枝の春発芽の‘斉一性'および発芽後の梢端優勢生長と、貯蔵デンプンの消長パターンとの間によい関連性のあることを示唆する結果が得られた。このことについて、さらに検討を深める予定である。
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