クワ(Morus alba L.)における分枝特性の1つとして、枝(短枝または長枝)の伸長停止に伴い頂芽や枝先が脱離する現象(不定脱離、節間脱離)を見出した。本研究の目的は、この脱離に関する起因や機構の一端を明らかにすることにあった。 1.低幹仕立てのクワ一年枝(古条)において、伸長を停止する前の中位の新梢(短枝)あるいは上位枝(長枝)の頂芽を切除すると不定節間脱離が引き起こされる。この頂芽切除の際に、先端の節間の切り口あるいは全体に1-ナフタレン酢酸(NAA)を処理すると離層形成が遅れ、離層の上部の落下も遅れた。また、NAAが離層形成の部位の決定にも関与することが示唆された。これに対して、エチレン発生剤であるエセホン(2-クロロエチルホスホン酸)を頂芽切除した先端の節間の全体に塗布すると離層形成が早まった。この結果、落葉の場合と同様に、クワの不定節間脱離においてもオーキシンとエチレンの関与が示唆された。 2.萌芽後の4月下旬においては一年枝の上位から2/5部位の新梢の伸長がいくぶん良かったが、5月中旬以後は上位の新梢(上位枝)の伸長が顕著になった(梢短優勢生長)。しかし、上位枝の生重量(茎重と葉重)は萌芽後からよく増加し、生育は常に下位の新梢(短枝)より優った。上位枝は、この良好な新梢生育により5月に入ってからみられる優勢な伸長生長をすると考えられた。 3.萌芽前に一年枝を横臥枝化すると、横臥枝の下側の側芽生長は著しく阻害されて側芽の脱離を引き起こしたり、伸長しても矮小枝(短枝)を形成して頂芽や枝先の脱離を引き起こした。この横臥枝の下側の側芽生長の阻害要因は主に発芽の際の重力ストレスによるものであることを示唆した。
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