本年度はミトコンドリア(Mit)に外来遺伝子を導入するためのベクターの構築を検討した。この方法では、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の持つマーカーとして電子伝達系酸素apocytochromeb(Cob)に着目した。この酵素は呼吸能に関与し、比較的分子量が小さく、サブユニット構造を持たないので、遺伝子マーカーとして適当と考えた。このCob遺伝子に隣接して外来遺伝子を挿入したintegration vecterを用いて、Cob欠損Mitを、呼吸能の回復を指標として形質転換して、隣接する外来遺伝子ともmtDNA上に挿入しようとするのが本研究の手法の特徴である。そのためのベクターの構築を試みた。 まず、効率よくMtDNAを調製する手法を確立してS.cerevisiaeON0-26株のDNAを調製し、ベクターの作成に用いた。ついて、Cob遺伝子欠損酵母を誘導するため、apocytochromeb遺伝子をクローン化し、これを用いて挿入欠失によってCOB遺伝子欠損株を誘導することとした。mtDNA上のCob遺伝子が挿入欠失されると呼吸能が欠損するので、Cob遺伝子欠損株にCob遺伝子に外来遺伝を連結して導入した場合、呼吸能の回復によって外来遺伝子の導入された株を検出する指標とできる。この目的に使用するCob遺伝子をPCR法でフローニングした。酵母のCob遺伝子はすでにクローン化され、塩基配列も明らかにされている。そこで、この遺伝子の5^Lと3^L末端の塩基配列を基にしてプライマーを作成し、PCRによって、COB遺伝子を調製しクローン化した。現在のところ、研究はこの段階まで進んでいるが、今後、Cob遺伝子に大腸菌のlacZ遺伝子を挿入し、Mitに挿入してCob遺伝子を欠失させて宿主酵母を作成する予定である。
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