研究概要 |
昨年度の研究結果から,天然海水中より分離された鞭毛虫および繊毛虫を種苗生産された孵化直後の仔魚に与えたところ,アユ仔魚で摂食されなかったもののキジハタ仔魚は繊毛虫を補食することが示唆された。そこで本年度は,さらにヒラメおよびマダイの孵化仔魚について,原生動物の初期餌料としての可能性を調べた。その結果,マダイにおいては,孵化後3日齢の仔魚はほとんど繊毛虫を摂食しなかったものの6日齢仔魚ではわずかながら仔魚添加実験区での繊毛虫の密度が無添加対照区に比較して減少しており,マダイ仔魚による繊毛虫の摂餌が示唆された。しかしながら,孵化後4日齢のヒラメ仔魚ではまったく繊毛虫を摂食していないことを示す結果しか得られなかった。その他キジハタやアカハタ等のハタ類仔魚で再実験を試みたが,本年度は孵化仔魚の歩留まりが極めて悪く,繰り返しの実験を行うことが出来なかった。 また天然環境における原生動物捕食者としての仔魚の役割を明らかにするために,土佐湾や伊予灘より様々な魚種について全長数mm程度の仔魚を採取し,昨年度と同様その消化管内容物を微生物学的な手法により詳細に観察した。約45属285個体の消化管内部を観察した結果,魚種により,【.encircled1.】観察した個体のほとんどすべてで原生動物が多量に観察されたもの,【.encircled2.】観察されないかされても比較的少量であったもの,および【.encircled3.】全く原生動物の捕食がみられなかったものの3群に分かれることが明らかとなった。【.encircled1.】のグループにはカワハギ・アミメハギ・ヒメダラ等が,また【.encircled2.】のグループにはシロギスやタチウオ等が,【.encircled3.】のグループにはカタクチイワシ・マイワシ・クロサギ等が該当した。 これらの実験・観察結果から,ある種の魚類は,孵化後比較的日齢の浅い仔魚期に繊毛虫等の原生動物を捕食していること,またこれらの性質を利用して仔魚の種苗生産の初期餌料として繊毛虫等の原生動物を利用することが可能であることなどが示唆された。
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