これまでPCPは多くの場合多成分系であると報告されているが、筆者らは先にこれら多成分系のほとんどはPCPの抽出精製過程で生じたartifactである可能性を示唆した。そこで上記3種について多成分系の生成に及ぼす蛋白分解酵素阻害剤の影響を検討した。その結果、いずれの種においても場合も阻害剤を用いない場合多成分系が観察されたが、存在下ではPCPは単一成分として得られた。この結果は、これらの種においても先に筆者らが示したA.tamarenseと同様に阻害剤の非存在下で生成された多くの成分が蛋白分解酵素の作用により生じたartifactであることを示した。次に、この知見に基づき各渦鞭毛藻からintactなPCPを調製し、それらの諸性状を比較した。各PCPのアポ蛋白は1本鎖のポリペプタイドで、いずれの場合も分子量は35KD前後であった。PCP各成分のstoichiometryはこれまで報告されているPCPとは異なり、蛋白当たりのPer.、Chl.a量が高く、またPer.とChl.aの量比は種による違いが認められた。各PCPのアミノ酸組成は比較的近似していたが、先に報告したA.tamarenseやA.catenellaのそれとはかなり異なっていた。また、A.cohorticulaのPCPではN末端から50残基までのアミノ酸配列を明らかにすることができた。次に種々の照度下で培養した細胞のPCP含量を測定したところ、いずれの場合も照度が低下するほどPCP含量が増加する傾向が認められたが、低照度でもG.mikimotoiiは高いPCP含有量を示さず、本種が他の種に比べ、光量の多い表層に分布することが裏付けられた。また、先に筆者らがA.tamarenseで見いだした会合型のPCPも程度の差はあるもののすべての種に認められた。会合型のPCPは遊離型のそれと比べ光エネルギーの伝達に際し、高い効率を有することが予測されるが、これら渦鞭毛藻では遊離型と会合型の濃度を調節しながら光環境に適応している可能性も示唆された。
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