研究概要 |
前年度は,^<14>CをラベルしたDHA(^<14>C-DNA)をアルテミアに取り込ませ,^<14>CがDHA以外のDPAやEPAなどの脂肪酸にどの程度存在するかをシンチレーションカウンターで測定する方法を開発するとともに,アルテミアに取り込まれたDHAが他の脂肪酸に転換していることを飼育試験とアイソトープを用いた試験により実証した。 そこで本年は,まず,アルテミアにはリノレン酸を多量に含む淡水型(ユタ産)とEPAを多く含む海水型(天津産,ブラジル産)の両タイプのあることが知られていることから,これらの違いによりDHAの転換に差異があるか否かを調べた。その結果,DHAの取り込みはブラジル産が最も多く,ついでユタ産,天津産の順であった。しかし,DHAからDPAへの転換率と産地により異なる脂肪産組成を持つ幼生との間に明確な関連は見られなかった。次に,飼育水温によりDHAの短鎖化される割合が異なる可能性が示唆されたことから,水温を16℃および25℃に保持させた実験区と,6時間目まで16℃に保ち,それ以降室温を25℃に移し温度変化を与えた区を設け取り込み実験を行った。その結果,一定の水温に保持させた区での取り込みに大きな違いが見られなかったが,水温に変化を与えると放射能の取り込みが30%余り増加し,油脂の取り込みに温度が関与していることが分かった。DHAからDPAへの転換は水温の上昇にともないDPAの割合がやや増加する傾向が見られたが,大きな違いはなかった。本研究の結果から,アルテミアはDHAをEPAへ短鎖化するため,DHAを濃縮させにくいことが明らかになった。すなわち,淡水・海水両タイプのアルテミアとも本来DHAを含有していないことから,アルテミアにとってDHAは必須栄養素ではなく,DHAを短鎖化して他の脂肪酸やエネルギー源にしているものと推察された。
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