政府が1995年からのコメ部分開放を受け入れ、2000年には関税化される可能性もある。日本の稲作が21世紀に向けて存続して行くためには、水田の賃貸借や売買を通じて稲作経営の規模を拡大し、企業的で活発な多くの稲作経営を作り出し、国民に安く、美味しく、安全なコメを、安定的に供給することが重要である。 本研究では、この水田の賃貸借と売買が、北海道と都府県でどのように行なわれ、それらを制度的、経済的、技術的要因がどのように規定してきたかを計量的に明らかにすること、そしてこの計量的研究結果に基づいて、水田の賃貸借と売買を促進するためには、どのような政策方策が考えられるかを明らかにすることを目的とした。 水田賃貸借の計量分析では、やみ小作を間接的に取り扱った、小作面積と小作料の不均衡状態における調整的決定過程に関する理論枠組みを設定し、それに基づき、北海道と都府県における同調整過程とそれらに及ぼす制度的、経済的、技術的要因の影響を、農地法と農用地利用増進法の業務統計とその他関連統計を利用して、計量的に明らかにした。 水田の有償所有権移転(売買)の計量分析では、特に60年から76年の期間、都府県と比較して大幅に多くの水田売買(有償所有権移転)を通じて稲作の経営規模構造の改善が進行した北海道での、水田売買行動の経済的・制度的規定要因を、時系列データを使用して計量経済学的に分析した。北海道での水田売買が水田価格の短期(一年)の調節による需給均衡では決まっていないとの認識の下、それぞれ販売側農家の水田販売行動と購入側農家の購入行動の理論モデルを、水田価格を直接説明変数として含まないで形で別々に構築し、水田販売と購入行動への経済的・制度的・技術的要因の影響を数量的に推計した。これら理論的・計量的研究の結果を基礎に、稲作経営の水田賃貸借・売買を通じての規模拡大のための、政策的手段についても検討・提案を行なった。
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