外国人農業研修生の受入れは経験的蓄積も多い。わが国の農業技術習得に関する東南アジア諸国からの期待も高い。しかしながら、平成2年から外国人研修生の受入れ団体が公益法人に限定され、また平成5年から外国人技能研修制度が開始され、外国人研修制度をめぐる環境は大きく変化した。農業分野では、そうした制度変化への対応が遅れ、農業に関する技能資格が設定されるような動きもまだ出ていない状況である。 いわゆる「昭和一桁世代」が大量にリタイヤを迎え、家族労働力の減少とともに農村部の農業雇用労働市場の縮小という事態が同時に起こり、農業労働力不足は極めて深刻な状況に陥った。そのため、外国人農業研修生の受入れは国際交流・支援を主目的としたものであるが、その狙いが徐々に農業労働力不足の解消策へと重点を移行し、変質しつつある。 外国人研修生は、いまや「単純労働力雇用」の代替方策として位置づけられており、合法的な制度を活用しているとはいっても実務研修内容などは「単純労働」と変わらない。研修受入経営からすれば、東南アジア諸国からきた研修生とは言葉も通じず、意志疎通がままならない。そうした状況で、わが国の高度に進んだ農業技術を習得させるのは不可能に近い。技能実習制度は研修期間を終えた研修生を雇用するものであるが、その前提条件として技能検定資格が必要になる。農業分野の技能資格は、全くない。この制度を活用するためにも、今後、農作業の技能検定資格を準備していくことが不可欠である。今後は農業法人経営などに優先的に限定して、受入経営の水準を向上させる必要があるであろう。こうした制限を加えることによって経営改善を図られると思われる。
|