研究概要 |
(1)根系生長モデルの2次元から3次元への拡張については,基本的に達成できなかった.その主要な理由は,土壌密度条件及びメタルールの3次元化が2次元データの単純な拡張によっては不可能であり,根系分枝規則や根端のランダム伸張運動の3次元データを収集する手法が開発できなかったことにある.実験より直接3次元データをとる方法を模索しつつ,既存の根箱実験による2次元データから3次元データを構築する方法を検討することにした.それには,更に多様な2次元土壌密度条件における根系パターン形成のデータを蓄積する必要があった. (2)実施した根箱実験では,前年の根箱内土壌の上層と下層に密度差を与える実験に加えて,水平方向に土壌密度差を与えた場合,斜め方向あるいは種子を中心にして区形状に密度境界面を与えるなど,各種の土壌密度条件を準備し,根系サンプルデータを得た.その結果,いずれの土壌条件でも根系分布に異方的べき分布のあることが判明し,土壌密度境界面近傍の根分布密度の特徴も詳細に分析することができた. (3)根系の発達と根箱内土壌水分の散逸の傾向が,地下からの毛管水供給のない根箱という制約はあるものの,ある程度定量化することができた.更に生育ステージ(葉齢)と根系パターン形成の関連や,土壌孔隙分布と根系パターンの関連性について現在実験をすすめている.本報告書にはデータの整理が間に合わないものの,前年の根系生長モデルでは欠けていた時間項や土壌大孔隙に対する根系応答の特性が解明されつつある. (4)現在は,3次元根系生長モデル作成の具体的な方針を検討している最中である.
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