養豚における経済的最適環境制御アルゴリズムの確立を目的として、その基礎となる豚の成長モデルを構築し、豚および豚舎の熱収支式を尊出した。それらの式を基に任意の舎内気温に対する豚の飼育期間や必要飼料量を予測するとともに、変動する外気温に対して舎内気温を一定に維持するための暖冷房経費、飼料の経費、豚の出荷価格など経済的諸要因について支出や収入を算出し、もって収益を最大にする豚舎の最適舎内気温を検討した。 豚の成長モデルは日飼料摂取量と日増体重とを検討した。環境要因として気温、生理要因として体重をそれぞれ独立変数とする日飼料摂取量および日増体重の成長モデルを作成するため、北海道立滝川蓄産試験場で1976年-1979年に不断給餌で飼育された雌および去勢豚の計114頭による肥育試験結果を用いた。品種はランドレース、大ヨークシャーおよびハンブシャーである。肥育の前期(30-50kg)、中期(50-70kg)、後期(70-90kg)における最適気温はそれぞれ15.2℃、14.3℃、14.6℃となり大差はなかった。日飼料摂取量は気温と直線的関係があり、成育後期ほど、また気温が低くなるほど増加する傾向を示した。これらの回帰式より生産効率の指標となる飼料要求率(日飼料摂取量/日増体重)を考察した結果、それを最小とする最適気温は肥育前期19.3℃、中期17.6℃、後期17.3℃となり、肥育段階で最大2℃の差を生じた。寒冷地の典型的な肥育豚舎を対象に収益を最大にする肥育豚の経済的最適舎内気温を計算した。秋季(10-12月)の最適気温18℃に対し、冬季(1-3月)のそれは13℃となり、舎外気温の変動によって大差が生じた。豚価の変動は最適気温に影響せず、むしろ収益に大きな影響を与えた。飼育密度が約2倍になると最適舎内気温は2℃の差で生じた。以上より、飼料要求率からみた最適舎内気温と、収益を評価関数とする最適舎内気温とに差が認められた。
|