最終年度は、豚舎を対象とする試作した経済的最適環境制御機器の実証試験を継続するとともに、気温および湿度の環境因子が家畜の熱収支モデルに及ぼす影響を詳細に検討するため、飼育が容易な採卵鶏を対象に成育試験を行った。そして採卵鶏の熱収支モデルと豚の熱収支モデルとを比較検討し、採卵鶏舎への経済的最適環境制御の可能性を追求した。 1)十和田市内で育成豚約250頭を飼養する豚舎にて試作した経済的最適環境制御機器の有効性を検証した。暑熱時は、換気回数が約30回/時となり、比較的大きな換気であるため、舎外気温のの影響を受け、舎内気温は約5℃の気温差が生じた。寒冷時は、換気回数は9回/時と暑熱時に比し約1/3に減少した。このため舎外気温の変動に対して舎内気温の変動はほぼ2℃以内で制御できた。酷暑時の8月に頭数が減少したものの供試豚は順調な成育を示し、予測された飼料要求率3.0にちかい値を得た。残された課題として、収益の評価は2-3年にわたる長期の飼養試験が必要であること、機器についてはアンモニアガスや雷に耐えられる装置の開発工夫が必須であること、が指摘される。 2)気温および湿度が家畜の熱収支に及ぼす影響を検討するため、白色レグホン種の採卵成鶏5羽を対象に22周齢から78周齢まで成育試験を行った。日平均気温および日平均湿度と日産卵重とに密接な関係が認められた。日産卵重と日平均気温との相関は、肥育豚の日増体重と日平均気温との相関より約2倍〜3倍も高かった。これは舎内気温の制御により産卵重を変化できることを意味し、経済的最適環境制御の採卵鶏舎への適用が示唆された。
|