1.ウシの舌遊び行動を繋留肥育牛、種雄牛、繁殖牛、搾乳牛、育成牛で調査した。舌遊び行動は繋留という飼育状況に加え、人工哺乳牛で多発し、給餌後に多く、かつ餌の操作性を高めること(長い乾草)で抑制できることを示し、原因として繋留の他、吸乳も含む摂食行動の量的・質的抑制が関与することを明らかにした。 2.繋留という飼育環境の行動・生理に及ぼす影響を明らかにするため、ヤギを用い10カ月間の実験を行った。繋留に対し、ヤギは3期からなる行動反応を2期からなる生理反応を示した。行動反応の過程は3回を通じて共通していたのに対し、生理反応は、1回目はN/L比の高揚として、2回目は好酸球の強い抑制として見られた。2回目からは1頭のヤギに頚回しという常同行動が出現し、実験終了まで続いた。個体におけるストレスに対する適応戦略の違いが示唆され、低・中レベルの行動的ストレス反応を強く示す個体は、生理的にもストレス状態である傾向を示したのに対し、高レベルの行動的ストレス反応を強く示す個体は、生理的ストレス状態の解消が示唆された。また葛藤行動はオピオイドレセプター拮抗剤ナロクソンにより抑制され、常同行動はドーパミン拮抗剤ハロペリドールによって消失し、行動的ストレス反応と生理的ストレス反応との密接な関係も示唆された。 3.牛の典型的な常同行動である舌遊び行動に及ぼす、人工哺乳と粗飼料細切の効果を3カ月齢まで調査した。哺乳期およびその直後では吸引の抑制が、哺乳後期からは粗飼料細切による舌の操作性不足がストレスをもたらす可能性が示唆された。 以上より、繋留は行動的にも生理的にも強いストレス反応をもたらすが、繋留ストッレッサーのみでは常同行動は優占せず、その他のストッレッサーとの複合により形成されるものと考えられた。
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