本研究では、家禽におけるカルシュウム依存性プロテアーゼ遺伝子の発現システムについて、育種学的観点から分析を行った。その結果つぎの研究成果を得た。 1 体重大小選抜ウズラの筋肉におけるCANP活性値は、明瞭な系統間差が存在し、成長速度の高いLL系統は、成長速度の遅いSS系統に比較してCANP活性値が高いことが判明した。このことは、CANP活性値は発育速度と深い関係があり、選抜に伴いその発現に違いが生じていることを示すものである。 2 肉用鶏と産卵鶏の筋肉におけるCANP活性値を比較すると、ウズラの選抜結果と同じ傾向を示した。また、CANPのインヒビター活性値は、肉用鶏で高く、逆に産卵鶏で低かった。このことは、品種改良に伴って、CANP活性値のみならず、そのインヒビター活性値も変化していることを示すものである。 3 CANPのcDNAをプローブとして、in situハイブリダイゼーション法により、CANP遺伝子の染色体上の物理的位置を検討した結果、CANP遺伝子はニワトリの場合、第1染色体上の短腕に位置することが判明した。 4 体重大小選抜ウズラにおけるCANP遺伝子の発現について、転写レベルおよびアミノ酸転移レベルで分析した。ノーザンブロットハイブリダイゼーションの結果、各系統のmRNAの発現量は、LL>RR>SSの順に高く、CANP遺伝子のmRNA量は酵素としての活性値とは逆の関係にあった。これらmRNA量の系統差と酵素活性値の系統差の逆転現象は、選抜に伴って、細胞内での遺伝子発現のシステムに変化が生じていることを示すものである。
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