PCR法によるウシ胚の性判別を行うための新しいY染色体特異的DNAプローブを作成する目的で、まず顕微切断-PCR法を組み合わせて、ウシY染色体DNAライブラリーの作成を試みた。すなわち、研究初年度である本年は、まず、と場で採取した去勢雄牛の血液より白血球を分離し、70時間培養後ビンブラスチンにより分裂中期停止処理を行い、染色体標本を作製した。つぎに倒立顕微鏡下で、マイクロマニピュレーターに装着したガラス針を用いて、Y染色体を切断・回収し、オイルチャンバー内の微量液滴中で、DNAの抽出および制限酵素による切断を行った。これに合成リンカーおよびプライマーを結合させ、PCRによりDNAを増幅した。PCR産物をプラスミドベクターに入れ、コンピーテント細胞に形質転換してDNAライプラリーを作成した。さらに雌雄それぞれの肝臓よりDNAを調製し、制限酵素で切断したDNA断片を非放射性同位元素でありdigo xigenin‐11‐dUTPで標識し、サザンハイブリダイゼーションを行い、Y染色体に特異的なクローンを選別した。その結果、顕微切断したY染色体由来DNA断片の増幅が可能であり、これまでクローニングにより38個のクローンが得られた。このうち1個はコロニーハイブリダイゼーションにより雄特異的であることが確認されており、さらにサザンハイブリダイゼーションによる確認を行っている。 次年度は、さらに新たなDNA断片の探索を行うとともに、現在とられている断片の塩基配列を決定し、これに基づいてプライマーを合成し、PCRによるウシ胚の性判別への応用を検討したい。
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