PCR法によるウシ胚の性判別を行うための新しいY染色体特異的DNAプローブを作成する目的で、前年度は顕微切断-PCR法を組み合わせて、ウシY染色体DNAライブラリーの作成を試みた。本年度は、昨年度に得られたDNAライブラリーより、まず、コロニーならびにドットハイブリダイゼーションにより雄特異的DNA断片の予備的な探索を行い、さらにサザンハイブリダイゼーションにより、特異性を検討した。 これまでにクローニングにより得られたクローンのうち、65個のインサートが得られた。このうちコロニーハイブリダイゼーションにより1個、またドットハイブリダイゼーションにより2個、計3個の雄特異的DNA断片が得られた。これらを、さらにサザンハイブリダイゼーションにより、特異性を検討した結果、ゲノムDNAをSau3AI断片に対し雄特異的に反応したDNAクローン1個(BDYD62)が得られた。このクローンについては、さらに塩基配列の決定を行った。 PCR法によるウシ胚の性判別の手法を確立し、体外受精由来ウシ胚盤胞の栄養外胚葉細胞の一部を切断し、これを用いてPCRにより性判別を行った。その結果、雌雄肝臓DNA断片を用いてPDRを行い、雄のみに雄特異的DNA断片(157 bp)の増幅が認められた。これをウシ胚に応用した結果、胚抽出液でも同様に雄特異的DNA断片が同位置に検出され、胚においてもPCRにより性判別が可能であることが示された。今後、本研究で得られてDNAプローブを用いたPCRにより、胚及び精子の性判別の可能性が示された。
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