家畜・家禽の発生及び成長に伴う骨格筋組織の形成機構の解明は、良質の食肉の効率的生産にとって重要である。分子量六十数万の新タンパク質(650kDa成分)は、鶏骨格筋の発生過程において発生初期の鶏胚の筋肉に多量に存在するが、発生の進展に伴って筋肉組織から急激に減少する。本研究では、筋発生における本タンパク質の役割を追究することにより、骨格筋の形成機構を明らかにすることを目的とした。 1.鶏18日目胚から650kDa成分を分離・精製し、物理化学的性質を調べた結果、本成分は糖鎖を有す糖タンパク質であり、筋形質においては脂質と複合体を形成し、リポタンパク質として存在することが明らかになった。 2.本成分はアクチンとの結合能を有し、アクチン結合タンパク質であることが明らかになった。 3.成鶏骨格筋の筋原線維の間接免疫蛍光法により、胚骨格筋のみならず、成鶏骨格筋においてもZ線に局在することが明らかになった。 4.本成分に対する抗体を用いて骨格筋及びそれ以外の以外の器官・組織における本タンパク質の存在の有無、局在部位をイムノブロット法及び免疫蛍光法を用いて調べた結果、本成分は心筋、平滑筋および血球成分である赤血球や白血球にも存在した。 これらの結果から、650kDa成分は鶏骨格筋の骨格筋の発生過程においてα-アクチニンやアクチンとの結合を介して筋原線維の組織化や筋原線維をZ線を介して形質膜に連結する機能を有し、骨格筋形成に重要な役割を担っていることが推測された。脊椎動物の骨格筋の発生過程における本成分の機能を明らかにするためにはさらに免疫電子顕微鏡法等手法を用いた本研究の推進が必要である。
|