我々は嗅覚の一次中枢嗅球におけるGABAニューロンについて、ニューロンの化学的性質及び形態的性質の両方に注目し、発生学的解析を進めてきた。前年度は化学的性質について培養系、移植系での形質発現について解析を行なったが 今年度は形態的性質に注目して解析を行なった。 免疫細胞化学的研究によって嗅球の外網状層に存在するCa-結合蛋白parvalbumin(PV)含有ニューロンはGABAニューロンの一部であることを明かにし、Golgi鍍銀様に染色できるPV抗体で、細胞体及び神経突起の形や広がりを解析することができた。その結果外網状層に存在するPV含有GABAニューロンは形態的に少なくとも5つ以上のサブグループに分けられた。更に、発生学的解析でそれらのPV含有ニューロンはラビットでは生後10日頃、外網状層の内半層に観察され、その後急激に数が増えるが外網状層外半層には生後2週で初めて陽性細胞が出現し生後3週でほとんど成体と同様になる事を明かにした。我々はこの観察からa)外網状層の外半、内半の発生が著しく異なること、b)PVの発現が、推定されるニューロンとしての発生からかなり遅れていることを示唆する所見を得ることができた。このような所見は、更に嗅球各層の発生の過程、及びPV含有ニューロンを含めて我々の予備的研究で明らかになりつつある糸球体層の化学的性質に基づくいくつかのニューロングループのニューロンとしての誕生と形質発現の時間的ずれについて検討する必要がある事を示している。
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