サイトカインの循環系中枢調節における短期及び長期的作用-覚醒ラットでの解析

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04807010
• 研究機関: 宮崎医科大学
• 研究代表者: 河南 洋 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (00049058)
• キーワード: サイトカイン / インターロイキン1β / 褐色脂肪組織交感神経 / 心拍数 / 腎交感神経活動 / 血圧 / 覚醒ラット

研究概要

サイトカインの1つであるインターロイキン1β(IL-1β)の心血管系と自律神経活動に対する作用を覚醒ラットを用いて検討した。慢性的に留置した電極とカテーテルを介して腎交感神経活動(RSNA)、褐色脂肪組織交感神経活動(BAT‐SNA)、血圧、心拍数、体温を覚醒ラットから記録した。
1.IL-1βを静脈および脳室内に投与すると、体温上昇に先行して血圧、心拍数とRSNAが増加した。これら心血管系と自律神経活動の潜時は静脈内投与の方が脳室内投与の場合より短かった。また持続時間は約20〜30分間と一過性であった。
2.これらの反応は、プロスタグランジン合成阻害剤であるインドメサシンを予め静脈内に投与しておくと、消失した。したがって、プロスタグランジン系の関与が示唆された。
3.下大静脈に同量の血液を還血しながら、腹腔大動脈より採血し、血中ACTHとカテコラミンをRIAにより測定した。IL-1βの静脈内投与15分後で、ACTHともにノルアドレナリンが有意に上昇し、90分後にはコントロールレベルに戻った。
4.IL-1βによる発熱反応をもたらす標的器官と考えられている褐色脂肪組織(BAT)を支配している神経活動(BAT‐SNA)を覚醒ラットから記録することに成功した。
5.BAT‐SNAはIL-1βの静脈内投与により顕著な興奮反応を示した。その時の交感神経活動パターンの変化を解析した結果、心拍動に同期性を示す振幅の大きい活動成分の増加が見られた。一方、RSNAでは心拍動に同期性を示さない振幅の小さい活動成分が増加していることが判明した。このようにIL-1βの自律神経活動に対する作用に地域差の存在が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] T.Osaka,H.Kannan,S.Kawano,Y.Ueta and H.Yamashita: "Intraperitoneal administration of recombinant human interleukin-1β inhibits osmotic thirst in the rat." Physiol.Behav.51. 1267-1270 (1992)
• [文献書誌] Z.Li,K.Inenaga,S.Kawano,H.Kannan and H.Yamashita: "Interleukin-1β directly excites hypothalamic supraoptic nenrons in rats in vitro." Neuro.Report. 3. 91-93 (1992)
• [文献書誌] S.Kawano,T.Osaka,H.Kannan.and H.Yamashita: "Excitarion of hypothalamic paraventricular neurons by stimulation of the raphe nuclei." Brain Res.Bull.28. 573-579 (1992)
• [文献書誌] H.Kannan,T.Nakamura,Y.Hayashida and H.Yamashita: "Brain peptides and central regulation of the sympathetic outflow in conscious rats." Jpn.J.Physiol.42(suppl). S13- (1992)
• [文献書誌] H.Kannan,C‐K.Su,H.Tanaka,Y.Ueta,C.Y.Chai,Y.Hayashida and H.Yamashita: "Differential modulation of discharge pattern in sympathetic outflow to the kidney and the brown adipose tissue by interleukin1β in conscious rats." Society for Neuroscience,Abst.18. 1013- (1992)