サイトカインの1つであるインターロイキン1beta(IL・1beta)の飲水行動と腎排泄機能に対する効果を調べた。代謝ケージを用いて1日あたりの摂食量、飲水量、尿量、尿ナトリウムとカリウム排泄量を測定した。 1.IL-1betaの腹腔内投与(4mum/kg)により、摂食、飲水量が減少した。尿量は有意な変化を示さなかったが、尿ナトリウムとカリウムの排泄量が減少した。 2.腎臓の除神経を予め行ったラットでは、IL-1betaによる尿ナトリウム排泄抑制反応は消失した。しかし、摂食、飲水抑制反応はコントロールラツトと差はなかった。昨年度、IL-1betaによって腎交感神経活動が増加することを報告した。したがってIL-1betaによる抗ナトリウム利尿反応は腎交感神経の興奮による尿ナトリウム再吸収の促進によって起こっている可能性が考えられる。なお除神経は腎臓ノルアドレナリン含量の消失により確認した。 3.IL-1betaの上記反応をもたらす脳作用部位を明らかにする目的で、まず脳室周囲器官の1つである終板器官(OVLT)を含む第3脳室前壁腹側部(AV3V)領域を電気あるいは神経毒のカイニン酸投与によって破壊した。破壊後数日間、摂食、飲水は著しく抑制されたが約1週間後に回復した。IL-1betaによる飲水、摂食抑制反応は減弱傾向を示したが尚存続した。しかしIL-1betaによる尿ナトリウムとカリウム排泄抑制反応はAV3V破壊群で消失した。したがってAV3VがIL-1betaの電解質尿排泄調節に係わっていることが示唆された。一方脳弓下器官(SFO)領域破壊では有意な変化が認められなかった。
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