サイトカインの1つであるインターロイキン1β(IL-1β)の循環、体液調節における働きの解明を目的として、飲水行動、心血管系、腎機能と中枢神経系に対する作用を検討した。 1.飲水行動に対する作用-IL-1βは浸透圧性飲水行動を抑制したが、アンギオテンシンII、ポリエチレングリコールによる飲水行動には有意な影響を与えなかった。また1日あたりの自発性飲水行動も抑制した。これらの反応はインドメサシンの前処理により減弱した。2.心血管系に対する作用-覚醒ラットにおいて、IL-1βの静脈と側脳室内への投与により、血圧、心拍数、体温、腎交感神経活動の増加が生じた。これらの反応の潜時は静脈内投与の方が脳室内投与より短かった。また褐色脂肪組織支配の交感神経活動もIL-1βにより増加した。血中ACTHとともにノルアドレナリンレベルはIL-1βにより増加した。IL-1βは全身的にCRF-ACTH-コルチゾル系とともに交感神経系を活性化させることが示唆された。3.腎排泄機能に対する作用-代謝ケージを用いて測定した尿量はIL-1β投与により有意な変化を示さなかったが、尿ナトリウム、カリウム排泄量は減少した。これらの変化は予め腎臓除神経を行うと消失したので、腎交感神経との関連が示唆された。4.上記IL-1βによる反応をもたらす脳内作用部を明らかにすることを目的として、まず想定される第3脳室前壁腹側部(AV3V)領域をカイニン酸で破壊したラットを作成した。AV3V破壊群ではIL-1βによる尿ナトリウム、カリウム排泄抑制反応が消失した。しかしIL-1βによる摂食、飲水抑制反応はAV3V破壊群で減弱傾向を示したが、尚投与前に比べて持続した。IL-1βによる体液調節への関与に少なくとも1部AV3V領域が係っていることが示唆された。
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