研究概要 |
神経膜カルシウム(Ca)チャンネルに対する向知性薬(pyrrolidone誘導体)の効果をNG108-15細胞で検討した。細胞に対してパッチクランプ技法により膜電位固定を行ない、2種類のCaチャンネル電流(低閾値・一過性および高閾値・持続性電流)を記録した。最近開発された向知性薬nefiracetam(DM-9384)は1μMの低濃度においてCaチャンネル電流の持続性成分を2倍に増強したが、一過性成分に対しては影響を与えなかった。用量-反応関係はベル形曲線となり、そのピークは1μMのところにあった。他の向知性薬でも同様の結果が得られたが、その効果はnefiracetamに比して低く、その順位はnefiracetam>aniracetam>oxiracetam>piracetamとなった。cyclic-AMPのアナログdibutyryl cyclic-AMP(1mM)も持続性電流を増強したが、さらにnefiracetamを加えても電流はそれ以上増加しなかった。逆に与えても同様の現象が見られた。nefiracetamにより増強した電流は、L型Caチャンネル阻害剤であるnifedipine(10μM)により顕著に減少した。また、infedipine非感受性のN型Caチャンネル電流も軽度(〜1.5倍)の増強効果が認められた。細胞を非特異的蛋白キナーゼ抑制剤H-7(100μM)で処理したところ、このようなnefiracetamによるCaチャンネル促進効果は消失した。また、抑制性G蛋白(Go/Gi)の活性を抑制する目的で百日咳毒素で処理たところ(500ng/ml,>20時間)、細胞のnefiracetamに対する感受性は外見上消失した。以上の結果より、向知性薬は神経膜L型Caチャンネルに対して賦活作用を有することが判明した。さらに、向知性薬の作用発現に際して抑制性G蛋白および細胞内cyclic-AMPが介在することが示唆された。
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