研究概要 |
ニワトリ末梢多形核白血球顆粒から精製したp33(分子量33kの塩基性蛋白質)が内在性アルギニン特異的ADP-リボシル転移酵素によってin vitroおよびin situで特異的に修飾されること,p33のアミノ酸配列が骨髄性白血病の原因となるv-mybがん遺伝子産物によって誘導される骨髄性蛋白質mim-1(myb-induced myeloid protein-1)とアミノ酸配列の相同性が高いこと,mim-1のN-末端の疎水性領域はp33には存在しないことを見出した.更に,p33とmim-1との相同性を調べるために,p33をリシンエンドペプチダーゼで切断し,N末断片を含む8種のペプチド断片のアミノ酸配列を調べた処,mim-1のlle297がp33ではTyrである以外は全く差異を認めなかった。そこで,mim-1 cDNAのヌクレオチド配列(909-923)を調べたところ,297番目のアミノ酸に対応する三塩基配列はATCであり,p33のlle297に一致した.この事実は申請者が見出した多形核白血球顆粒のp33はmim-1 N末の疎水性ペプチドが切断されて生じたものであり,p33はc-mybによってコードされた蛋白質によって誘導されたものであって,骨髄細胞の分化に関与しているものと思われる.p33のADP-リボシル化が,p33の機能にどう影響するかは今後の研究課題である.この点を追求するために,アルギニン特異的ADP-リボシル転移酵素活性の阻害剤を検討した処,ノボビオシンが1-2mMの濃度で強力にp33のADP-リボシル化を阻害することが分かったので,この阻害剤を用いてp33の役割を明らかにしたい.
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