研究概要 |
この研究ではリソゾーム・システインプロテアーゼであるカテプシンLの糖鎖構造を決定し、カテプシンLの構造と機能発現、細胞内局在化機構への糖鎖構造の関与を明らかにすることを研究の目的としている。カテプシンLは申請者らとKirschkeらが各々独自に初めて、ラット肝より単離、精製に成功した糖蛋白質で、完全一次構造と遺伝子構造も申請者らによって決定済みであるが、糖鎖構造は未決定であった。そこで申請者らは精製ラット肝カテプシンLからN-グリカナーゼで糖鎖を切り出し、そのオリゴ糖還元末端に2-アミノピリジンを還元アミノ化反応(PA化)で結合させれ、糖鎖を蛍光標識して順相及び逆相カラム(HPLCシステム使用)を使って分析した。その際、設備備品として購入した蛍光分光光度計を使用した。この結果によるとカテプシンLは主に5種のM_2GlcNAc_2-(46%),M_3GlcNAc_2-(10%),M_4GlcNAc_2-(19%),M_5GlcNAc_2-(18%),M_6GlcNAc_2-(7%)含んでいることが推定された。申請者らはリソゾームシステインプロテアーゼファミリーであるカテプシンB及びHの糖鎖構造をすでに解析し報告しているが、Bの糖鎖の85.9%を占めるM2GlcNAc_2がLの糖鎖構造中にも46%も含まれているという非常に興味ある事実を見出した。従って申請者らの解析した3種のリソゾーム・システインプロテアーゼだけに限っても、カテプシンHはM_5→M_9GlcNAc_2-を含んだ高マンノウース型であり、Bは86%が持殊なM_2GlcNAc_2-であり、現在分析したLはM_2GlcNAc_2-が46%で残りはM_3→M_6GlcNAc_2-の高マンノース型で、BとHの混成した型の糖鎖構造から成っていることが明らかになった。それ故、糖鎖中にシアール酸を含むことが申請者らによって報告されているカテプシンJ(C)の糖鎖構造も解析して、各々のリソゾーム・システインプロテアーゼファミリーの生合成、分解の機構、細胞内局在化機構への糖鎖構造の関与について、さらに研究を進めている。
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